「十二月の都大路上下ル」は、都大路を走る女子全国高校駅伝の話。レース直前で指名された補欠選手が、本番で未知の実力を発揮するというありがちな設定。しかし途中からやっぱり不思議な万城目ワールドに発展し、思わず笑ってしまった。
テレビでマラソン中継を観ていると、ランナーと一緒になって沿道を走るギャラリーがいるものだ。なんとも滑稽に映る。万城目さんも同じ目線でみていたのではないかと嬉しくなった。
表題作「八月の御所グランド」は、なんとしても卒業したい留年五回生が、教授との交換条件で早朝野球大会に出る羽目になる話。優勝は必須というミッション。
友人に有無を言わせず協力を求める。2人のやりとりはお馴染みの展開。文体や表現がとにかく愉快でニヤニヤしてしまう。人数集めに奮闘するも、自然とメンバーが揃う。御所グランドと深い関係が徐々に明らかになり、静かな感動を覚える。
京都という舞台から誕生した2つの短編は、小品ながら濃厚。読みやすく万城目さんらしいファンタジーが愉しめる。