仙台三越の近く。店のオープンは1971年というから、今年で52年目になる老舗である。
「BASIE」のオーナー菅原さんが、店名の「COUNT」を勧めたというエピソードは、ジャズファンの間では有名な話。
雑居ビルの1階。来る者を誘うアプローチに導かれる。
薄明かりの通路を奥へと向かうと、客の到来を察したかのようにマスターがこっちを見ている。偶然とはいえちょっと気恥ずかしい。
突き当たりのドアを開ける。現存しているのが奇跡といっていいような、昭和レトロな空間が現れる。
入って右側の棚には沢山のレコードが収められている。かなりの数に圧倒される。
正面のカウンターは満席。マスターは黙って誰もいないテーブル席の方を指す。貸切状態だ。何処に座ってもいいのだろうと戸惑いながら、スピーカー前のテーブル席に腰掛ける。傷んでいる黒いソファーは時を刻んでいる。
コーヒーをオーダーし、ゆっくりと店内を見渡す。テーブルにある灰皿。今どき珍しい喫煙可。煙で汚れた壁は時の流れを刻んでいる。
おしゃべりも可。カウンターの常連客は煙草を片手にウイスキーを飲みながら、マスターと会話している。
スピーカーに耳を傾ける。やはりジャズを聴くならALTECがいい。優しく包み込むようなほどよい音量。東北の大都会にマッチしている。
ジャズ喫茶ではたいてい選曲はマスターに委ねられる。聞き覚えのある名盤の選択は嬉しい。
演奏されるミュージシャンの魂は、仕事に追われた一日の終わりに、ひと時の充実感を与えてくれる。
ずっと留まりたいが終電は近い。後ろ髪を引かれるように店を後にした。
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