ボクは坂好きである。東京の坂で最初に衝撃を受けたのが、副都心線の雑司が谷駅近くの「のぞき坂」だ。なんとユーモアのあるネーミングか。
とにかく角度がエグい。遠いから見ると立ちはだかる壁のよう。野球部が坂道ダッシュしていたこともあった。トレーニングにも最適であろう。
「近くにすごい坂がある。自転車で行こう」
豊島区に住んでいた先輩から“紹介”されたのが、出会いのきっかけである。東京にこんな場所があるのかと、驚いたものだ。
のちに知るのだが、この辺りは神田川で削られた大地。南北に多くの坂が存在し、特に北側の斜面はきつい。苦労している住人には失礼だが、坂好きにはたまらない名坂地帯である。
借りた自転車でここを下った。慣れた運転で猛スピードで走る先輩の背後を、ブレードをかけながらゆっくりと追った。とにかく怖かった。
そんな愉快な思い出とともに、「のぞき坂」は東京の坂好きの原点となった貴重な場所である。