庵野秀明監督のカラーが全面に出た傑作「シン・ゴジラ」を超えられるのか。そんな不安は吹っ飛んだ。山崎真監督らしさ存分に堪能できるゴジラだった。
舞台は太平洋戦争直後の日本で「三丁目の夕日」の世界だ。レトロな雰囲気がよく、できればもっと見たかった。前半は焼け野原になった東京を背景に、元特攻隊員の苦悩や戦災後に生き人間模様を丹念に描く。ドラマとして上出来なのだが、これゴジラ映画か?と疑問符が。しかし、これは後半への布石だった。
銀座で暴れるゴジラ。放射熱線で街が破壊されるシーンは原爆を彷彿させる絶望感。電車をくわえるシーンは第1作のオマージュだろう。
自衛隊はない時代で兵器もろくにない。巨大なゴジラをどう倒すのかが最大の見せ場。戦後復興に向かう人々の前に立ちはだかる敵。英知と勇気を待って立ち向かう日本人の気質に感動を覚えた。