ボクのほそ道。徒然なるままに。

食いしん坊の記録です。ジャズが好き。

ヒロシ君とカップラーメンの味

ヒロシ君は20歳で亡くなった。親友と呼べほどではないが中学校の同級生の死は初めてのことでショックだった。葬儀に参列した時、父親(この時初めて会った)から丁寧に頭を下げられたことが、今でも強く印象に残っている。

葬儀には大学の友人グループ(だろう)が来ていて、そのなかでリーダー格の男子が泣いていた。中学の同級生は誰もいなくて、ボクは悲しみを共有できず孤独感を味わった。

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中学生の頃、ヒロシ君の自宅に遊びに行ったことがある。トランプをしていると彼のお姉さんがコーヒーを出してくれた。突然の身近な年上の女性の登場に、思春期のボクらは妙に意識していた。とても美しくみえた。

部屋には大きなステレオと数多くのレコードがあった。ほとんどクラシックで、その中のヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」をかけてもらった。アルプスと川の情景が浮かぶ名曲だ。

その後、ヒロシ君は県内有数の進学校に入学した。秀才というより努力家で、周りでは親の期待に応えようと無理をしていたと噂していたし、死期を早めてしまったという人もいた。彼の死因は聞かされていない。

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中学校の卒業を控え同級生全員と泊まりがけで合宿施設に行った。テレビを観たりトランプをしたりして一睡もせずに遊んだ。初めて徹夜をした。とてもいい思い出だ。

ヒロシ君は夜食で珍しいカップヌードルを食べていた。分けて欲しいと頼んだらちょっと残しておくと言われた。少し残された(いわゆる食べ残し)カップラーメンは今まで食べたことのない味だった。それがチリトマトだった。

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スーパーに行ったら特上なるカップヌードルが新発売されていた。迷わず購入。

この味を噛み締め度にヒロシ君のことを思い出す。彼から教えてもらったチリトマトのことを。酸味と辛味の効いた味は大人の階段を登る味だったのかもしれない。

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