ボクのほそ道。徒然なるままに。

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エリセ監督の新作「瞳をとじて」を観る

ビクトル・エリセ監督作品としては実に31年ぶりの長編である新作を観た。彼は寡作な作家で、撮った長編は今まで3本しかない。

「エル・スール」「マルメロの陽光」、そして、ボクが観てきた映画のなかで、生涯のナンバーワンといっても過言ではない「ミツバチのささやき」。どれも好きな作品である。今回も期待に胸膨らむ。

ファーストシーンは屋敷に探偵が訪れる。富豪の老人は死に際に、音信不通になっている娘探しの依頼をする。あれ?違う映画じゃないか。シアタールームを間違えたかな。過去に前科があるんで不安になる。

次のシーンで突然展開が変わる。ここまでは映画撮影のワンシーンだったというオチ。探偵役の俳優は失踪するという本筋のストーリーになる。

主人公の元映画監督はエリセ監督自身の投影と考えると興味深い。スペインの歴史とか監督自身の人生観とか、知識があればもっと楽しめただろう。映像はエリセ監督らしく詩情豊かで静か。最初からわかっていたけど、強弱はほとんどなく平坦。途中退屈で眠気に襲われた。

数年後に失踪した俳優が見つかる。声をかける娘役はアナ・トレント。「ミツバチのささやき」で無垢な少女だった彼女もおばさんになってた。「私の名はアナ」と呟くシーンにも、本作のテーマである“老いこと”と“時間の流れ”が浮き彫りになる。

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